こんにちは。整形外科医オルソ100% (@ortho100p)です。
じっとしていると腰が痛くなります。
動いている方が痛みが楽になります。
もしかしたら強直性脊椎骨増殖症(ASH)かもしれません。
強直性脊椎骨増殖症そのものは加齢性変化の一つであり、治療対象にはなりませんが、きちんと診断されるのとされないのとでは大きく違います。
もしかしたらと思ったら整形外科医師に相談しましょう。
強直性脊椎骨増殖症(ankylosing spinal hyperostosis:ASH)とは?
主に高齢者に生じる脊柱前縦靱帯の骨化を病態とする疾患です。
強直性脊椎炎とは異なり、加齢変化の一型です。
50歳以上の男性に多く,罹患率は6~12%と報告されています。
整形外科を受診して腰が痛い方は基本的には立ち上がりや寝返りや前屈・後屈の時に痛いという方が多いです。
しかし、強直性脊椎骨増殖症の患者さんたちは「動いていると良いんだけど、寝ていたり休んでいる方が痛みが強い。」
と言われることが特徴的です。
画像診断
診断はまずレントゲンをチェックします。横から見て胸腰椎が前縦靱帯の骨化により4椎体以上連続していれば強直性脊椎骨増殖症と診断されます。
CTを取ると、椎体(せぼね)のつながりが詳細にわかります。
MRIで脊柱管狭窄症(神経の通り道が狭くなる)がないかどうかチェックすることもあります。
治療方針
強直性脊椎骨増殖症そのものは加齢性変化の一つと考えられています。したがって、特別な治療薬や手術方法などはありません。
運動により症状が和らぐので、無理のない範囲での体幹や股関節のストレッチなど,運動療法を行います。
椎体が連続しているため、背骨の動きが悪くなり、つながっていない椎体に過度な負担がかかり、脊椎の骨折を起こしてしまう場合もあります。
そのため、転倒しないように注意すること、体力をつけておくことが重要です。
じっとしている時の痛みが強いようであれば痛み止めを内服します。
基本的には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。慢性的な痛みであれば弱オピオイドやデュロキセチンを内服します。
痛みの具合は人それぞれなので良く話を聞いて治療薬を考えます。
もしMRIで脊柱管狭窄症があれば、神経障害性疼痛の可能性を考えてプロスタグランジンE1製剤やプレガバリン,デュロキセチンといった薬剤の投与を検討します。運動麻痺や歩行困難など症状の悪化が認められる場合には手術が必要なこともあります。
まとめ:強直性脊椎骨増殖症(ASH)は加齢性変化の一つ
仙腸関節の痛みがあり、HLA-B27関連の強直性脊椎炎との鑑別が重要になります。
患者さんの症状により、治療方針が変わります。
痛みが強くなければストレッチなど体操の指導で経過観察ができます。
痛みが強い場合は投薬をします。
じっと安静にしていると腰が痛い、動くと和らぐという痛みの場合は強直性脊椎骨増殖症かもしれません。
気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、医師に相談しましょう。
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(激しい痛みが伴う場合は無理しないでください。)
ご覧いただきありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。